フーリエ変換赤外分光光度計(FT-IR)の原理と粉体評価

はじめに

FT-IRにより、有機材料の同定やサンプル表面の官能基の変化を調べることができます。今回はFT-IRの原理と粉体評価についてご説明いたします。

赤外吸収スペクトルの原理

赤外分光法は測定サンプルに赤外線を照射し、透過又は反射して得られた赤外線を変換・分析することで、そのサンプルの化学構造が推測できる測定手法です。化合物表面の官能基や構造によって得られるスペクトルのピークの位置や形状が異なるため、得られたスペクトルからサンプルの化学構造を分析することが可能です。FT-IRは特に有機物の測定に有用な測定機であり、材料の同定や構造の変化を比較することで反応の進行等が評価できます。

用途① 汎用樹脂の同定や構造の確認

検出されたピークがどの構造に由来するピークかを分析することによって、測定したサンプルの材質が推測できます。

例1.ポリプロピレン(PP)

プラスチックケースなどで良く使用されるPPの場合、主成分のCH基やCH2基が強く確認できます。

例2.ポリメタクリル酸メチル(PMMA)

透明樹脂として良く使用されるPMMAはメタクリル基(COOCH3)に含まれるカルボニル基(C=O)やエーテル基(-C-O-C-)のピークが特徴的です。

例3.アセトンとIPAの比較

有機溶剤の一つであるアセトンとIPA(イソプロピルアルコール)は下図の通り1箇所しか構造の違いがありません。このように似たような構造の物質でも、構造の異なる箇所を比べることで、識別することが可能です。アセトンに含まれるカルボニル基(C=O)に由来するピークが1700cm⁻¹付近に見られるのに対して、IPAの水酸基(-OH)に由来するピークは3350cm⁻¹付近に確認できます。

例4.ステアリン酸とステアリン酸亜鉛の比較

ステアリン酸とステアリン酸亜鉛は、カルボニル基の末端の構造(HやZn)の違いしかありませんが、カルボニル基(C=O)のような特徴的なピークの位置で比較することが可能です。ステアリン酸のカルボニル基(C=O)は1700cm⁻¹付近に見られるのに対して、ステアリン酸亜鉛のカルボニル基のピークは1550cm⁻¹に見られます。(その他のピークには大きな違いは見られません。)このようにカルボニル基の近隣の構造や状態の変化によって、検出されるピークの位置が異なるため、カルボニル基の評価には特に有効的です。

用途② 反応による構造変化の確認

モノマーとポリマーの比較(ポリメタクリル酸メチル:PMMA)

メタクリル酸メチルの重合前と重合後のIRスペクトルを示します。重合前のカルボニル基のピークが1730cm⁻¹付近にあるのに対し、重合後のピークは1710cm⁻¹付近にあることがわかります。このように反応によって化学構造が変わるとピークの位置も変わるため、ピーク位置の変化から反応の進行を確認できます。

最後に

弊社栃木工場では、テスト時の粉体を評価して頂くためにFT-IRを所有しております。表面処理や複合化などの処理で粉体表面の官能基に変化が起こる場合、処理の進み具合の評価ができます。テストの際には、是非ご活用下さい。

※ここに記載した内容は弊社試験に甚づくものであり、結果を保証するものではありません。

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