メカニカルドーピング処理による可視光応答型光触媒の合成

はじめに

光触媒は光(主に紫外線)に当てると抗菌・抗ウィルス機能、セルフクリーニング機能、空気浄化機能などを発揮しますが、当社の粉砕技術を活用することで可視光にも反応する光触媒の製造が可能となります。

「可視光応答型光触媒」とは

光触媒の素材として代表的な二酸化チタンや酸化亜鉛は、主に紫外線を照射することで光触媒としての機能を発揮します。しかしながら、太陽光に含まれる紫外線はわずか5~6%程度と少なく(可視光は約52%)、太陽光が届かない室内ではその触媒効果が発揮されません。二酸化チタンや酸化亜鉛の酸素サイトを窒素や硫黄に置換(元素ドーピング)すると可視光応答性が出ることがこれまでの研究で解かっています。可視光応答型光触媒であれば、蛍光灯やLED灯の明かりでも触媒効果が発揮されるだけでなく、太陽光の照射においても可視光領域まで利用できるため、触媒効果の増大が見込めます。

メカノケミカルを利用した元素ドーピング

S元素やN元素ドーピングの手法は、硫化水素などの危険なガスや、プラズマ、X線、スパッタリングなどの特殊な装置、高温や真空・減圧、不活性ガス雰囲気下で処理する必要があり、製造時のコストアップが懸念されます。そこで、粉砕機を活用したメカノケミカル法による元素ドーピング技術に着目しました。手法は簡単でメディア撹拌型粉砕機に酸化チタンや酸化亜鉛と、ドープしたい元素(硫黄やN源の尿素)を混ぜて粉砕するだけです。当社粉砕機は、不活性ガス雰囲気中での粉砕にも適応しており元素ドーピング処理に対応できます。

「Sドープ型二酸化チタン」の作製

当社粉砕機「アトライタ」を用いて、Sドープ型二酸化チタンを作製しました。手法はアトライタに所定量の二酸化チタン(アナターゼ型)と硫黄粉末を投入し、60,120,180分間粉砕しました。比較対象の為に、硫黄を添加せず同様に粉砕したサンプルも作製しました。光触媒効果の評価は、メチレンブルー(MB)の分解で比較し、処理後の二酸化チタン粉末をメチレンブルー溶液に添加し、太陽光を約8時間照射して、メチレンブルーの分解(脱色)具合を比較しました。硫黄を添加して粉砕したサンプルは、硫黄を添加せずに粉砕したサンプルと比較して、メチレンブルーの色が明らかに薄くなっており、光触媒効果の増大が確認できました。

アトライタの詳細はこちらから

「Nドープ型酸化亜鉛」の作製

Sドープ型二酸化チタンと同じ手法で「アトライタ」を用いてNドープ型酸化亜鉛を作製しました。Nドープ源には尿素粉末を用いています。Nドープの評価はラマンスペクトルと反射スペクトルの測定を行いました。ラマンスペクトルの結果では、273cm-1、580cm-1付近(黄色の矢印で示す)で原料には見られないピークが見られ、処理時間の増加とともにピーク強度も強くなっています。これはメカノケミカル処理によって酸化亜鉛に窒素がドーピングされていることを示しており、処理時間の増加とともにドープ量も増えていることが分かります。また、拡散反射率と、それをKubelka-Munk変換した吸収スペクトルの結果から、原料では430nm付近にあった吸収端が650~700nm付近の可視光領域までシフトしていることが分かります。Nドープによって酸化亜鉛のバンドギャップが狭くなり、可視光領域の光を吸収できていることを示しています。

元素ドーピングの連続処理化

上述の通り、バッチ式のアトライタで元素ドーピングできることがわかりましたが、量産化を視野に入れた場合、スケールアップやコストダウンを考慮すると連続式の生産機が望まれます。そこで当社の連続型乾式粉砕機「ダイナミックミル」で元素ドーピングの連続処理を試みました。処理は「アトライタ」と同様に酸化亜鉛に尿素を混合し、ダイナミックミルで粉砕しながらNをドーピングしました。ラマンスペクトルの結果ではアトライタと同様に273cm-1、580cm-1付近にピークが確認できたことから、連続処理に於いてもNがドーピングされたことが確認できます。また、拡散反射率と、それをKubelka-Munk変換した吸収スペクトルに於いてもダイナミックミルで連続処理したサンプルで吸収端が650~700nm付近までシフトしていることが確認できたことから、可視光領域の光を吸収できていることがわかります。

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