ハイビスミルを用いた高濃度・高粘度スラリーの高効率粉砕

はじめに

近年、湿式粉砕の需要の高まりから、様々な性状のスラリーに適用できる粉砕機が求められています。特に、固形分の多い高濃度スラリーや、高粘度スラリーの処理ニーズが非常に高くなっています。今回は、高濃度・高粘度スラリー処理に適している当社新製品の「ハイビスミル」をご紹介します。

高濃度・高粘度スラリーの処理における課題

スラリー中の固形分が高濃度の場合、粒子間の相互作用により粘度が高くなります。また、粉砕が進みスラリー中に微粒子が増加することでも粒子間の相互作用による影響が大きくなりスラリーは増粘します。これら現象は、ボールミルの粉砕効率低下につながります。これは、スラリーが高粘度になることで、粉砕媒体であるボール同士の間隔が広がり、衝突がしづらくなることによります。そのため、高粘度スラリーの処理では粉砕効率が落ちないように濃度を下げる、あるいは分散剤を添加して粒子間の相互作用を低減させることで増粘を防ぐ等の対策をする他、必要以上に大きな攪拌エネルギーを加えて処理(効率の悪い処理)をする必要があります。当社では「ハイビスミル」を開発し、大きなエネルギーを効率よく粉砕媒体に付与することによって、高濃度や高粘度スラリーの効率のよい処理を実現しました。以下には、「アトライタ」と「ハイビスミル」を用いて、高濃度で粘度の高いスラリーを処理した試験結果を比較し、「ハイビスミル」の能力を紹介します。

「ハイビスミル」製品ページ
「アトライタ(湿式)」製品ページ

処理例

図2に本試験で用いた「ハイビスミル」の装置構成を示します。「ハイビスミル」では、スラリーを循環させながら処理を行う循環式運転で処理を行いました。本試験では、ボールとスラリーの分離をギャップ方式で行う仕様としました。一方で、「アトライタ(湿式)」では粉砕室にスラリーを投入し所定の時間処理を行うバッチ式(回分式)運転で処理を行いました。それぞれの装置での処理条件は表1の通りです。分散剤は処理前に少量添加することとし、増粘する条件で処理を行いました。





図3に処理時間の経過に伴う平均粒子径の変化を示します。「ハイビスミル」では循環式運転で処理を行っていますので、処理時間は、スラリーがミル内に滞留して粉砕作用を受けた時間であり、機内平均滞留時間としています。図のように「ハイビスミル」では「アトライタ」と比べて短時間で小さい粒子径を得ることができました。加えて、「アトライタ」ではスラリーの高濃度化に伴い粒子径の減少速度が著しく遅くなっているのに対して、「ハイビスミル」では高濃度条件下でも粒子径の減少速度はほぼ変わりませんでした。また、図4に示すように、70wt%の高濃度スラリーでは、粉砕が進むにつれて100,000mPa・sまで増粘しましたが、「ハイビスミル」では図3のように粉砕が確実に進みました。

図5に目標粒子径を1.5μmとしたときのスラリー濃度とボール能率の関係を示し、表2にその時の処理時間と処理能力を示します。ボール能率は単位時間当たりの処理能力を投入したボール量で割った値であり、ボールミルの効率を示す値です。「アトライタ(湿式)」では、スラリー濃度を60%、70%とすると45minの処理では1.5μmに到達しませんでした。そこで、スラリー濃度50%におけるボール能率で比較すると、「ハイビスミル」の方が約3.5倍効率の良い結果となりました。また、「ハイビスミル」ではスラリー濃度が高くなるほどボール能率が改善しました。これは、図3に示したように「ハイビスミル」ではスラリー濃度を70%と高濃度としても50%と同等の時間で処理できるため、高濃度化に伴い処理能力が増加したことによります。以上の結果より、「ハイビスミル」は「アトライタ(湿式)」では困難な高濃度・高粘度でも高効率に処理できることが示されました。

「ボール能率」の考え方について

「ハイビスミル」において高濃度スラリでも優れた粉砕能力を示した理由として、横型密閉式による高周速での処理が可能であることが挙げられます。「アトライタ(湿式)」のような縦型のミルでは攪拌アームを高周速で回転するとボールが遠心力でせり上がり、粉砕タンクの上部でボールが跳ねてしまい、処理の効率が落ちます。「ハイビスミル」では攪拌アームの回転による遠心方向と重力方向が一致する横型で、かつ密閉式となりますので、高周速にしても、ボールが遊ばず粉砕に寄与できるためムラのない均一な処理が可能です。

今回は、「ハイビスミル」による高濃度・高粘度スラリーの処理を紹介しました。「ハイビスミル」はチョコレート材料や、インキ塗料といった高粘度原料や高濃度の原料の処理に対して非常に有効です。また、既設の「アトライタ」の代替としても最適です。高粘度スラリーの処理においては、ミルだけでなくポンプや熱交換器などの付帯設備も高粘度に対応する必要があります。当社では、付帯設備を含めた処理システム全体のご提案が可能ですので、是非お気軽にお問い合わせください。

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