でんぷんの乾式アルファ化技術（アルファ化米製造等）

「アルファ化」とは

アルファ化とは、でんぷんの結晶構造を非晶化（アモルファス）状態に転移させることです。穀物などに含まれるでんぷんは生のままでは分子が規則的に並んだ結晶構造を持っており（β-でんぷん）、その結晶構造によって消化酵素の作用を受けにくく、体内で栄養素が十分に分解、吸収されません。穀物などをエネルギー源として利用する為には、生のでんぷんを水と一緒に加熱し、でんぷんの結晶構造をほぐすことが必要です。生のでんぷんを水と一緒に加熱することで、浸透した水分子によってでんぷんが膨潤し、その規則的な結晶構造が壊れて、非晶化状態に変化します。この状態をα-でんぷんと呼び、β-でんぷんからα-でんぷんに変化することを「アルファ化」といいます。

従来の「アルファ化」プロセスと新製法（Amorfast®）について

家庭で生のお米を炊飯するように、工業的にアルファ化穀物を製造する場合でも加水・加熱の工程が必要となります。従来のアルファ化プロセスとアルファテック社が開発した新製法（Amorfast®）を以下に示します。従来のプロセスは、加熱・加水工程を経て穀物がアルファ化され、それらを冷却、乾燥した後粉砕することで、粉体状のアルファ化穀物が製造されます。それに対して、新製法（Amorfast®）は、温度を制御しながら穀物を粉砕するだけで、加水する必要なしで、アルファ化穀物を製造することができます。プロセスが簡略化されるので、製造コストを抑えることができ、かつ、環境にも優しい製法となります。

食品向けAmorfast®製造設備について

食品向けのAmorfast®製造設備用に、当社「セントリカッター」の改良をアルファテック社と共同で進めてきました。「セントリカッター」の当初のコンセプトは粉砕刃を冷却することで、粉砕時に生じる粉砕熱を抑制することでしたが、今回アルファ化装置を開発するに当たり、粉砕刃を加熱する機器の改良と、アルファ化に最適な粉砕刃の選定をおこないました。「セントリカッター」の粉砕刃を加熱し、せん断のかかる条件下で粉砕することで、乾粉の状態でのアルファ化穀物の製造が可能となります。加水は一切必要ありません。

食品向けの機械としてコンタミネーション防止対策もしています。具体的には、軸封はラビリンスシールを採用しており、非接触シールとすることでシール材（グランドパッキンなど）から発生する異物のコンタミネーションを防止しています。さらに分解・洗浄性を高めるために、粉砕部を分解できるタイプも用意しており、分解した部品を水洗いすることが可能です。すべての部品を取り外すことで、菌の発生しやすい軸封部を徹底的に洗浄することができます。

「セントリカッター」でのアルファ化処理例

「セントリカッター」での処理例をご紹介します。以下図はエックス線回折分析装置（XRD）での測定結果です。エックス線を物体に当てて散乱光を観察することで物体の内部構造を調べる方法です。結晶構造があると固有のピークが観察されます。粉砕前の原料米は結晶性でんぷん特有の回折ピークが観察されます（緑の線）。Amorfast®粉砕後はそれらピークが消えて、非晶化（＝アルファ化）していることが示されています（青の線）。

アルファ化穀物の活用例

グルテンフリー・アレルゲンフリー食材

近年、健康上の理由から、小麦、大麦、ライ麦に含まれている「グルテン」を避ける為に、グルテンフリー食材を選択する方たちが増えており、小麦の代替品として米粉が盛んに使われています。一般的な製法の米粉をパンの製造に用いるとグルテンがない為、パンのボリュームが出にくい特徴がありましたが、Amorfast®製法での米粉を使用することで、グルテンフリーでも膨らみのよい製パンが可能です。

ケアフード

炊飯等の必要はなく、水を加えることで手軽に食べることができ、とろみがあることから、離乳食、介護食、調整食として利用されています。とろみの調整も容易です。

非常食

非常時には電気やガスが使えない場合があり、加熱不要で加水のみで食べられるアルファ化米が利用されています。Amorfast米粉は水分がほとんどなく、常温で長期保存が可能です。米由来であることから、エネルギー源として摂取ができます。

クリーンラベル

水を加えることで粘性をもつことから、増粘剤、安定剤の代替品として利用ができます。添加する水分量で粘性もコントロールが可能です。乳化作用もあるので、アイスクリームやクリーム、ソースなどにおける乳化剤としても活用機会があります。添加物を避けることができ、安心・安全な食品表示が可能となります。国産・地元産100％の食品の実現にも貢献します。